「たかいたかいお城のてっぺんには

お姫様が眠っているよ

王子様のキスで

目がさめるの

 

王子様が来なかったら

お姫様はずっとそのまんま

 

何百年も

何千年も

 

ずぅっとひとりで眠りつづけるの」

そんなお姫様の噂を聞いた

心優しい王子様は

たかいたかいお城のてっぺんに

ひとりでお姫様を起こしに行きました

 

お城へ行く途中に

 

 深い森の中で獣に襲われたり

茨の棘で体中を傷つけられたりしました

そんな風に

とてもつらい思いをして

やっとの思いでたどりついた

お城のてっぺんには

 

埃を被った金色と白のベッドの上に 綺麗だけれど少し古びたドレスを着た

 

 真っ白で

小さな

 

人間の骨がありました

 

それを見た王子様は

少しだけ吃驚して

笑顔をつくりました

そして

 

「ごめんね」

 

と一言涙を流しました

 

「おそくなってごめんなさい」

 

と何度も何度も

泣きながら謝りました

 

ふと

 

こんなに寒いところでは可哀想だ

 

 と思った王子様は

せめて骨だけでも自分の国のあたたかいところに埋めてあげようと

その骨に手を伸ばしました

 

 すると骨は

見る間に砕けて沙になり

開け放した窓から風に乗ってさらさらと流れていきました

 

 王子様はその沙の流れを最後の一粒まで見送り

静かに窓を閉じて

そのままお城を出て行きました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おはよう

おはよう

おはよう

 

ほら朝がきたよ

 

おはよう

おはよう

ほら

みんなが君を待っているから

さあ

はやく

 

 

 起きて・・・・・・」

 

 

 たかいたかいお城の中で

ひとりお姫様は目を覚ましました

 

お姫様は歌の続きがどうしても思い出せませんでした

 

でも歌の続きなんか既にどうでもよく

お姫様は部屋に残る残り香に胸を鳴らせていました

 

「あいつはここに来てる」

 

お姫様は知れず言葉を口に乗せました

 

頬を紅潮させ

夢中で部屋を飛び出しました

 

 お姫様は走って走って

走りました

 

わずかに残る

香りをたどって

 

 茨の道も

深い森も

 

 お姫様は気にせず走りました

 

 森の出口手前まで来ると

香りが一層強くなりました

 

 と思うが早いか

王子様が木の陰で休んでいるのが見えました

 

 「アルフォンス!」

 

お姫様は顔を真っ赤にさせて叫びました

 

ドレスも足もぼろぼろでした

それでもまだ走りつづけました

 

王子様は吃驚してお姫様の方を振り返りました

 

 お姫様は王子様までたどり着くと

力いっぱい王子様にしがみつきました

 

決して離すまいとしているようでした

 

「エドワード・・・?」

 

 王子様はおずおず尋ねました

 

 「うんっ・・・・・・・そう

エドワードだ」

 

 お姫様は必死に頷きました

 

 お姫様は王子様の瞳をじっとみつめました

 

「うん・・・・エドワードだよアルフォンス」

 

お姫様は涙を流していました

王子様も涙を流していました

 

 

王子様とお姫様はお城へ戻るとすぐに結婚式を挙げました

 

そうしてふたりはいつまでもいつまでも幸せに暮らしました

 

 めでたしめでたし

 

 

 

 

 

 

 「だってよ。つーか俺骨になった記憶ねえ。"いつまでもいつまでも幸せに暮らしました"  ってまだ式から一週間も経ってねえぞ。"いつまでもいつまでも幸せに暮らします"に書き換えてやろうか」

 

 王子様と結婚したお姫様のエドワードはベッドに寝転がり先ほど届いたばかりの絵本を読んでいました

 

「実は僕もね。エドが骨になったトコなんて見てない」

 

お姫様と結婚した王子様のアルフォンスはエドワードを背中から抱きしめながら言いました

 

「もっと簡単で噂どおりだったって教えてあげようか」

 

アルフォンスはエドワードに言いました

 

するとお姫様は

 

「でも子供向けの絵本に"ディープキスで眼を覚ましてセックスで十五年ぶりの愛を確かめました" なんて書けねえだろ」

 

と笑いながら言いました

 

 「そうだよねえ。教育上あんまりよくないよねえ。起きてすぐセックスなんて下品極まりない」

 

「襲った本人が言うなよ」

 

ふたりはベッドの上でくすくすと笑いあいました

 

 「ねえ」

 

アルフォンスはエドワードに話し掛けました

 

 「これからまた愛を確かめない?」

 

エドワードが顔を赤らめて「おう」と一言返事をすると

 

ふたりの唇が深く深く重なり合いました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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